会長挨拶
静電気学会会長 大嶋孝之(群馬大学教授)
静電気学会は1976年に設立され、2015年の一般社団法人化を経て、今年(2019年)で設立44年目を迎えております。その間の会員及び賛助会員の皆様のご支援に深く感謝いたします。最近では、学会に限らず、産業界も,研究・教育機関も,グローバルな視点から自らの改革が求められております。静電気学会も、一般社団法人としての活動を基盤に、会員や賛助会員へのサービスの充実を図りながら、社会的な役割と存在意義を高めていくことに努めたいと考えております。
静電気学会の社会的役割は、「静電気に関連した自然現象の解明とその応用に関する研究や教育・啓蒙活動を通して、産業界や教育界へ貢献していく」ことにあります。
一般の方がイメージする“静電気”は冬場に感じる不快な現象ではないかと思います。衣服を脱いだり、車のノブに手を近づけたとき、パチッと音がして痛みを感じる現象は性別・年齢を問わず、私を含め多くの人が不快に感じます。“静電気=不快なもの”のイメージが定着してしまっていることは残念でなりません。この現象には確かな科学があり、様々な可能性を秘めていることを広めていけたらと考えています。
静電気は電荷の発生・帯電・放電(中和)という一連のプロセスを指します。前述の“静電気”は正確には「放電が起きた」からであり「静電気が起きた」という表現は正しくありません。電荷の発生・帯電・放電のプロセスを理解し、制御できれば防止可能です。残念ながら静電気に起因する障害や災害はたびたび発生しており、一部はメディアでも報道されています。これら障害や災害を分析し、防止することは静電気学会の重要な責務でもあります。また静電気は目で見ることができないことが理解を妨げていると考えられ、静電気の可視化も大きなテーマです。
一方、現代は様々な商品が小型化・集積化しています。ナノテクを超え、分子レベルで操作する技術開発も進行しているほどです。静電気は扱う物質が微細になればなるほど影響は顕著になります。繊細な電子機器の障害を防ぐ技術開発が必要なのと同時に、静電気を利用して分子を操作してしまおうという研究も進行中です。静電気はバイオ、環境分野のみならず宇宙開発に至るまで、様々な応用が可能であり、静電気学会はこのプラットフォームになれると信じています。
学会にとって一番大事なものは、人的資源とそのアクティビティーを維持することです。静電気学会は同じ(時には異なる)分野の研究者・技術者のネットワーク構築と研究情報交換の重要な場として機能してきました。これは様々な問題解決になると同時に、時として重要な“気づき“を与えてくれます。この重要な場を維持するとともに、さらに会員の皆様に少しでも役立つよう学会活動の改善に努めて参りますので、ご要望やご意見をいただけますよう、会長としてお願い申し上げます。末筆になりますが、会員の皆様のいっそうのご発展を祈念申し上げます。