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会長挨拶

静電気学会会長 水野彰(豊橋技術科学大学)

静電気学会は会員・賛助会員の皆様に支えられ創立36年目となりました。昨年末の役員選挙により会長に就任させていただきましたので、この機会に、静電気学会は今後どのような方向に発展すべきかを考えてみたいと思います。

静電気学会は発足当時に大きな柱の一つでもあった電気集塵を中心とする微粒子除去技術の発表割合は低下しましたが、替わってプラズマ化学反応を利用して快適かつ健康的な環境を作る、総合的な環境技術への静電気の利用が着目されています。これらの知見は燃焼改善や排ガスのクリーン化技術として新エネルギーの有効利用にも大きな役割を果たすものと期待できます。また、低温プラズマを医療に応用する試みが注目を集めています。静電気障災害に関しましては、時代の変遷に応じて新しい課題が発生し、その対処が必要となり、知見が蓄積されてきています。静電気力は小さい対象ほど相対的に顕著になりますので、微小流体や遺伝子、微生物の制御などへの応用が進んできています。例えば電気集塵は微粒子をガス流れから分離する装置ですが、ナノ粒子を帯電して電界で付着させると微粒子を分極の強い方向に向きを揃えて薄膜を作成する、などの制御ができます。傾斜材料作成などにも有効で、今後の製膜技術として期待できます。プラズマ化学反応はプラスチックやガラス基板表面の親水性の制御に適しており、静電塗装などの印刷技術を画像表示パネルや電子回路作成に用いる際にも有用です。液体中も含めたプラズマ化学反応はナノ粒子の生成に有効な方法と期待されています。遺伝子の静電気力による操作は、iPS細胞作製などでの遺伝子導入、あるいは必要な遺伝子部分の迅速な配列解析などへの応用が進むと思います。高電界による電気流体力学現象の利用も有望であろうと思います。一方、ナノテクノロジーとは逆の大きなスケールで、まだ我々があまり明瞭に認識していない、地球あるいは宇宙規模の静電気の問題も残されていると思います。例えば大地震の直前に電離層の電子密度が上昇することが最近報告されていますが、これは地球規模の静電気現象であろうと思われます。

静電気は古い学問であるだけにすべての現象のもとになっています。このため時代背景が変わっても、新しい知見と応用技術を生む大きな学問的基礎であることに変わりはありません。静電気学会では上述のような学術の蓄積があり、過去の論文をウェブで自由に閲覧できます。温故知新は重要で、過去の論文を容易に検索できることは重要です。ぜひ今後の研究・技術開発に役立ててください。また静電気ハンドブックを出版していますが、英語の出版物を含め、このハンドブックに匹敵するものはありません。静電気学会誌の解説記事ならびに年次大会の講演論文集も大変参考になりますので、今後これらの学問的蓄積を会員の皆様に還元できるようデジタル化等の検討を進めて参ります。

静電気学会はIEEE/IASやフランス静電気学会などと会議の共同開催などを通じて協力しています。また国際学会誌IJPESTを発行しています。昨年、韓国のグループとプラズマ応用に関する会議を開催し、また北京、大連、サウジアラビアの大学を見学する機会がありました。韓国では低温プラズマをいち早く家電製品に応用し、最近も多くの製品を生み出しています。医療応用への関心も高くなっています。中国ではVOC(有機揮発性ガス状汚染物質)や排ガス中の水銀の問題などが、浮遊微粒子であるPM2.5に加えて関心を集めています。大学の研究設備が新しく、また充実してきています。サウジアラビアでは多額の資金を投入して欧米の一流大学と肩をならべる設備とスタッフをそろえた大学を短期間に立ち上げています。多くの国で学術研究のレベルが10年前とは比べ物にならないくらいに向上していることを感じております。静電気工学の研究領域と応用技術は我々の生活をより健康的にしていくために重要ですので、上記の国々の研究者そして学生の皆さんともさらに交流を深め、良い意味での競争を進めることができればと願っています。このための国際交流を静電気学会として一層進めたいと考えております。たいへんありがたいですが、ご寄付をいただいており、若手研究者にトレック賞、宍戸賞として外国学会での発表助成を行っています。また国内旅費の援助も行っております。今後も続けられるよう、学会運営の合理化を通じて努力していきたいと思っております。

学会は同じ分野の研究者・技術者の横のネットワーク構築と研究情報交換の重要な場です。特に若い会員がその重要性に気づかれ、学会を積極的に利用いただけると嬉しく思います。研究委員会活動、研究会、シンポジウムなど、企業技術者・大学・研究所の研究者との情報交換の場を積極的に提供することは、学会を支えていただいている会員・賛助会員の皆様に役立つ学会の重要な役目と思いますので、できるだけ積極的に進めます。 今後とも、会員の皆様に少しでも役立つよう学会活動の改善に努めて参りますので、ご要望やご意見をいただけますよう、会長としてお願い申し上げます。末筆になりますが、会員皆様のいっそうのご発展を祈念申し上げます。